「犬を飼っているけれど猫も迎えたい」「猫がいる家に子犬を迎えても大丈夫?」——犬と猫の多頭飼いを考えたとき、多くの人が最初に抱く不安です。結論からお伝えすると、犬と猫は一緒に暮らせる可能性が十分にあります。ただし、成功するかどうかは犬種・猫種そのものよりも、個体の性格や社会化の度合い、そして迎え入れる際の慣らし方に大きく左右されます。
この記事では、犬と猫の相性を左右するポイント、犬種・猫種による傾向、年齢の組み合わせによる違い、そして対面から同居までの具体的なステップを、獣医師監修情報などをもとに解説します。これから犬猫の多頭飼いを検討している方は、ぜひ参考にしてください。
犬と猫は一緒に暮らせるのか
犬と猫は一緒に飼うこと自体は可能ですが、その成功は性格・相性・環境づくりに大きく左右されます。
犬は群れで暮らすことを基本とする動物であり、猫は単独行動を好む動物です。この習性の違いが、同居のしやすさに影響すると考えられています。一般的に、先住者が犬の場合は群れ本能から新しい家族(猫)を受け入れやすい傾向がある一方、先住者が猫の場合は縄張り意識が強く、新入りの犬を受け入れるまでに時間がかかることが多いとされています。
つまり、「犬と猫だから難しい」のではなく、「どちらが先住者か」「その子がどんな性格・生育環境で育ってきたか」によって、同居のハードルは大きく変わってきます。
犬と猫の相性を左右するポイント
犬種・猫種以上に重要なのが、個体レベルでの適性です。それぞれ、同居に向いているとされる条件を見てみましょう。
猫との同居に向いている犬の条件
- 子犬期にさまざまな動物や環境に触れる「社会化」がされている
- 猫を捕食対象として見ていない(狩猟本能が強く出過ぎない)
- 穏やかで、吠えが少ない性格
- 食事・愛情・運動といった基本的な欲求が満たされている
犬との同居に向いている猫の条件
- 子猫期に他の動物と接した経験があり、社会化されている
- 過度に神経質でない性格
- 猫が一人になれる専用スペースが確保されている
- 身体的に健康な状態であること
いずれの条件も、犬種・猫種というよりは「その子個体がどう育ってきたか」に関わる部分が大きい点がポイントです。なお、未去勢・未避妊の場合は縄張り意識やマーキング行動が強く出やすいことがあるとされ、相性を見極める上で見落としやすい要因の一つです。
犬種による相性の傾向
犬種によって、猫との同居のしやすさに傾向の違いがあるとされています。ただし、あくまで「傾向」であり、同じ犬種でも個体差が非常に大きいことは前提として押さえておいてください。
比較的相性が良いとされやすい犬種
ゴールデン・レトリーバー、ラブラドール・レトリーバー、ビーグル、バセットハウンド、ボーダーコリー、マルチーズ、パグ、シーズーなどは、穏やかで吠えが少なく、猫のペースに合わせられる性格の子が多いとされています。
狩猟本能に由来する行動が出やすい傾向がある系統
以下のような犬種・系統は、狩猟本能に由来する行動が出やすい傾向があるため、猫を迎える際は個体の性格・社会化度をより慎重に見極める必要があります。
- テリア系(ジャック・ラッセル・テリアやフォックス・テリアなど): もともと小動物を捕える目的で改良されてきた歴史があり、猫を獲物と誤認しやすいことがあるとされています
- 視覚ハウンド系(グレイハウンド、ウィペットなど): 動くものへの反応速度が速い傾向があります
- 北方犬種(サモエド、アラスカン・マラミュート、シベリアン・ハスキーなど)
これらの犬種を否定するものではなく、「絶対に猫と暮らせない」という意味ではありません。社会化がしっかりされていて穏やかな個体であれば、問題なく同居している例も多くあります。大切なのは犬種名で判断せず、実際にその子がどんな反応をするかを見極めることです。
猫種・猫の性格による違い
猫の側にも、犬との同居に向きやすいとされる傾向があります。
犬との同居に向きやすいとされる猫種には、アメリカンショートヘア、ラグドール、スコティッシュ・フォールド、メインクーンなどが挙げられます。社交的で好奇心旺盛、穏やかで環境への適応力が高いとされる性格傾向が、犬との同居に向いているとされる理由です。
一方で、警戒心が強く神経質な猫や、臆病な性格の猫、また7歳以上の高齢猫は、活発な犬との同居によるストレスが大きくなりやすい傾向があります。高齢猫を迎える・迎えられる場合は特に、無理のないペースでの導入を心がけましょう。
ただし猫の場合も、猫種そのものよりも個体の性格や生育環境(子猫期に社会化されているかどうか)による影響の方が大きいと考えられています。「この猫種だから大丈夫」と決めつけず、目の前の子の性格をよく観察することが大切です。
年齢の組み合わせで変わる同居のしやすさ
犬と猫、どちらが先住者か、どちらが子どもかによっても、同居のしやすさの傾向は変わってきます。
| 組み合わせ | 傾向 |
|---|---|
| 子犬×子猫(同時に迎える) | 最も同居しやすいとされます。生後2〜3か月の社会化期が重なるため、互いを自然な仲間として受け入れやすい時期です |
| 先住猫(成猫)×子犬 | 比較的成功しやすいとされます。猫が縄張りの主として優位に立ちやすく、子犬側が柔軟に適応しやすい傾向があります |
| 先住犬(成犬)×子猫 | より慎重さが必要とされます。子猫専用の安全スペースの確保を最優先に考えましょう |
| 成犬×成猫(両方とも先住経験なし) | 個体差が最も出やすい組み合わせです。双方の行動パターンがすでに固定化していることが多く、慣らしに時間がかかりやすい傾向があります |
どの組み合わせであっても、「絶対にうまくいく」「絶対に難しい」と断定できるものではありません。表はあくまで一般的な傾向の目安として参考にしてください。
対面〜同居までのステップ
犬と猫を慌てて対面させると、どちらにとっても大きなストレスになり、その後の関係にも悪影響を及ぼしかねません。以下のような段階を踏んで、時間をかけて慣らしていくことが推奨されています。
- 別室・隔離生活: 新しく迎えた子は、先住の子とは別の部屋で数日〜1週間程度生活させ、まずは新しい環境に慣れさせます
- 匂い交換: 互いの匂いがついたタオルや寝具を交換し合い、姿を見せる前に匂いから存在に慣れさせます
- ケージ・バリア越しの対面: ケージ、ベビーゲート、網戸などを挟んで姿を見せ合います。犬側はリードを付け、「待て」「お座り」などの指示で落ち着いた状態を作ってから対面させましょう
- 短時間の同室(監視下): 数分程度から始め、落ち着いていられたら褒め言葉やおやつでポジティブな印象と結びつけます
- 自由行動範囲の拡大: 問題行動が見られなければ、同室時間や行動範囲を少しずつ広げていきます
なお猫同士の多頭飼いを検討している場合は、犬猫とは対面の進め方が異なる部分があるため、猫の多頭飼い対面ガイド|先住猫との相性の見極め方も参考にしてください。
このプロセスの進み方には個体差が大きく、完全な自由同居に至るまで数週間〜数か月かかることもあります。途中でうまくいかない様子が見られたら、一段階前の状態に戻すことも正常なプロセスの一部です。「後退した=失敗」ではありませんので、焦らず子たちのペースに合わせて進めてください。
生活動線・トイレ/食事は分けるべき理由
犬と猫が同居する上で、トイレと食事は基本的に分けて管理することが推奨されています。
食事を分けるべき理由
犬と猫では、必要な栄養素が異なります。猫は犬用フードだけを食べ続けると、タウリンやアラキドン酸といった猫にとっての必須栄養素が不足しがちです。特にタウリン不足は、猫の心筋症のリスクにつながるとされています。反対に犬が猫用フードを主食にしてしまうと、高タンパク・高脂質になりすぎ、消化器や肝臓・腎臓・膵臓に負担がかかる可能性があります。
横取り・食べ分けの具体的な対策については、多頭飼いの食事管理ガイド|横取り・食べ分け・留守番対策を解説や多頭飼いでごはんを横取りする原因と対策|犬・猫の食べ分け方法を解説で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。取り合いを防ぐ自動給餌器の選び方は多頭飼いの自動給餌器はどう選ぶ?犬・猫が取り合わないための選び方でも紹介しています。
トイレを分けるべき理由
犬が猫砂や猫の排泄物を誤食してしまうケースが報告されています。猫用トイレは、犬が入れない高所や仕切られた空間に設置するのが望ましいとされています。猫のトイレの適切な数や置き方については、猫の多頭飼いトイレ、頭数+1は本当に必要?現実的な数・置き方・自動化の選択肢も参考にしてください。
生活動線の工夫
猫が一人になれる高所(キャットタワーや棚など)を確保することは、猫のストレス低減に重要だと考えられています。トイレや水飲み場も、できるだけ犬の生活動線から外れた場所に配置しましょう。
ケンカ・追いかけ回しが起きたときの初期対応
犬と猫を慣らしている過程では、追いかけっこやちょっとした小競り合いが起きることもあります。ここでは初期対応の概要を紹介します(より詳しい対処法は別記事で扱う予定です)。
- 激しいケンカの最中は、素手で間に割って入らない: 興奮状態の犬や猫は、飼い主に対しても攻撃的になることがあり、咬傷事故につながるリスクがあります
- 頻繁な攻撃が見られる場合は、すぐに別室へ隔離: それぞれの部屋に食器・水・トイレを用意し、落ち着ける環境を作りましょう
- 猫を移動させる際は直接抱き上げず、厚手のブランケットなどで覆って安全に誘導する
- 犬が猫を追いかける行動への予防策として、犬が届かない高所(縦の動線)を用意する
- 犬に「待て」「お座り」などの基本コマンドを教えておくことも、猫が安心して過ごせる環境づくりにつながります
咬傷を伴うケンカが頻発する場合や、初期対応だけでは改善が見られない場合は、無理に自己解決しようとせず、動物行動診療科やしつけの専門家に相談することをおすすめします。
同居がうまくいっていないサインと相談先
犬と猫の同居がうまくいっていないとき、体調や行動にサインが現れることがあります。
- 食欲不振、隠れ込み、粗相といった消化器・行動面のサイン
- 皮膚の赤み、脱毛、舐め壊しといった皮膚症状
こうした変化はストレスが関係している可能性もあると考えられていますが、他の病気が原因であることもあるため、自己判断で「ストレスのせい」と決めつけないことが大切です。体調不良が続く場合や、咬傷を伴うケンカが頻発する場合は、動物病院や動物行動診療科への相談を検討しましょう。気になる症状がある場合は、早めに獣医師に相談することをおすすめします。
よくある質問
犬と猫、どちらを先に飼っているかで難易度は変わりますか?
傾向として、先住者が犬の場合は群れ本能から新しい家族を受け入れやすいとされる一方、先住者が猫の場合は縄張り意識から時間がかかることが多いとされています。ただし個体差も大きいため、一概には言えません。
対面から完全な同居まで、どのくらいの期間がかかりますか?
個体差が非常に大きく、数週間で落ち着く場合もあれば、数か月かかることもあります。「〇週間で必ず完了する」という目安はなく、それぞれのペースに合わせて進めることが大切です。
一度対面がうまくいかなかったら、もう無理ですか?
そうとは限りません。対面のステップを一段階前に戻し、時間をかけて再挑戦することも正常なプロセスの一部です。焦らず様子を見ながら進めましょう。
特定の犬種・猫種なら絶対に同居できない、ということはありますか?
「絶対にできない」という断定はできません。狩猟本能が出やすいとされる犬種であっても、社会化がしっかりされた個体であれば同居している例もあります。犬種・猫種はあくまで傾向であり、個体の性格を見極めることが重要です。
まとめ
犬と猫の多頭飼いは、犬種・猫種そのものよりも、個体の性格や社会化の度合い、そして迎え入れる際の段階的な慣らし方に成功が左右されます。別室生活から匂い交換、ケージ越しの対面、短時間の同室へと、焦らず段階を踏んで進めることが大切です。トイレや食事はそれぞれの栄養面・安全面の理由から分けて管理し、猫が一人になれる高所スペースも用意してあげましょう。同居がうまくいかないサインが見られたり、ケンカが頻発したりする場合は、無理に自己解決せず、獣医師や動物行動診療科に相談することも選択肢の一つです。
本記事は情報提供を目的としており、犬と猫の同居の成功や効果を保証するものではありません。個体差が大きいテーマのため、実際の相性や行動については、必要に応じて獣医師や専門家にご相談ください。掲載内容は2026年9月時点の情報です。


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